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MESSAGE

長倉洋海よりアフガニスタン情勢に関するメッセージ 2025.8.16

 タリバンがアフガニスタンを武力制圧して4年。この間、中学以上の進学を許されない女子の総計は220万人に上った。教育を望む女子の夢を断ち、さらに、多民族国家アフガニスタンをパシュトゥーン民族だけの国家に造り変えようとしている。世界各国はその暴挙を止める手立てを持っていないようだ。
 アフガニスタン以外にも、パレスチナでは人々が戦火と飢えにさらされ、大勢の子どもたちが亡くなっている。ウクライナではロシア軍の侵攻と市民への無差別攻撃が3年を越えても続いている。
 日本では終戦記念日である8月15日の翌日8月16日に、アラスカで米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領の会談が行われたが、ウクライナのゼレンスキー大統領を招くこともなく、停戦や和平への大きな収穫は何もなかったようだ。戦闘やミサイル爆撃で苦しむ人々に心を寄せることもなく、世界を自分たちの都合がいいように作り変えようとする2人の首脳。武力を背景とした傍若無人さに力を得たのか、パレスチナで戦闘と虐殺を続けるネタニヤフ首相はレバノンやヨルダンの領土の一部を含む「大イスラエル構想」を支持することをメディアに公言した。

 世界の混沌の渦が大きくなっているが、「アフガニスタン 山の学校」の卒業生からうれしい便りが届いた。「今まで家族のために働いていたが、また勉学の場に戻りたい」との内容だった。大学で考古学を勉強し、さらに院に進みたいと願っていたが、アフガニスタンの政変により叶っていなかったのだ。他の卒業生たちの家族について尋ねると、「数家族がポーランデに戻ったが、他の家族は戻っていない。タリバンの監視や理由なしの連行や監禁を恐れているからです」と教えてくれる。彼はその便りの中で、「学んだことをこの国や人々のために役立てたい」と熱い想いを記していた。

〈山の学校の外壁の上に座って、授業が始まるのを待つ5年生(2015年撮影)〉

 タリバンの侵攻で「山の学校」は壊滅的な打撃を受け、当時の生徒たちは散り散りになった。アフガニスタンの体制が変わり、学校の復興が実現するまでという条件付きながら、「支援の会」は首都カブールで女子学生が秘密裏に学ぶ「地下学校」の支援を3年前から行っている。民家の奥まった一室で授業を受ける女生徒の1人(14歳)は「私が好きなもの。それはアフガニスタンの豊かな文化と人々のもてなしの心、美しい自然と開けた景色。そしてアフガニスタンの音楽が奏でられる楽器の音を愛しています」と書いてくれた。文末には、「心の底から寄り添ってくれ教育への道を開いてくれた、地上の天使のような方々に感謝します」と支援への感謝の気持ちが添えられていた。

世界の現実は暗澹たるものだが、この子たちの勉学や祖国への思いが私の心に光を届けてくれた。平和と教育を願う子どもたちの心に、微力であっても寄り添うことができたらと思う。その思いにつながることで、新しいアフガニスタンと世界が見えてくるはずだ。

   2025年8月16日
                    お盆が過ぎようとしている釧路で
                             長倉洋海

〈植物の葉を傘代わりに羊の放牧をする卒業生のアミン(2017年撮影)〉

「アフガニスタン山の学校支援の会」の年次報告会が、10月12日(日)、東京都武蔵野市のスイングホールで開かれます。
ぜひともご参加いただければ幸いです。

〈「山の学校支援の会」製作の2026年カレンダーよりアフリカ・マダガスカル〉

天を支えるかのように立つバオバフの木と、手前の池で、早朝の水浴びをする男の子。

ブラジルのヤノマミ族は「自分たちが天を支えている」と考えていたが、私たちは天を支えることができるのだろうか。
そして、天と繋がることができるのだろうか。

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