長倉洋海よりアフガニスタン情勢に関するメッセージ 2025.9.10
「マスードの笑顔」
釧路の9月。木の葉がハラハラと落ちる。北の地の秋だ。

マスードが故郷パンシールの木々の落葉を見たら、どんな表情を浮かべただろう。遠くにヒンズークシ山脈とパンシール川を望む秋の光景に、目を細め微笑んだかもしれない。
彼が逝って24年。心の中には穴が空いたままだが、彼の笑顔を思い出すと、気持ちがおだやかになる。あの笑顔を見ているだけで心が洗われる。マスードの笑顔はまわりの人にだけでなく、戦った相手にも向けられた。それは銃を置き、共に生きようという思いの表れだったのだろう。

「愛がなかったら人生は寂しいものになる」というマスードの言葉を思い出すと、いまも戦争を続けるイスラエルや国民への弾圧をやめないアフガニスタンの為政者たちの心は、何で満たされているのだろうかと思う。彼らはマスードのような笑顔を浮かべることは決してできないだろうとも思う。
故郷を愛し、アフガニスタンの民を愛したマスード。彼はいつも自分の中に神を持っていた。だからこそ、ブレることなく、信念を貫いた。彼の生涯は49年と短いものだったが、仲間や友に囲まれ、花や木々を愛し、理想を求め激動の時代を鮮烈に生き抜いた。
マスードは逝っても、「神と共にありたい、アフガニスタンの人々と共にありたい」と願う人たちの心の中で輝き続けている。

私はマスードの笑顔をもっと多くのアフガン人に見てほしかった。多くの国の人に届けたかった。
彼は、いまもやさしい笑顔を浮かべ、高いところからアフガニスタンと人々を見守り続けている。
2025年9月10日 故郷の釧路で 長倉洋海
「アフガニスタン山の学校支援の会」の年次報告会が、10月12日(日)、東京都武蔵野市のスイングホールで開かれます。
ぜひともご参加いただければ幸いです。

